7.さくらのふくつ案内【津屋崎千軒の作家たち】

更新日:2020年04月07日

古きものから脈々とつながる 先人たちの感覚を今の時代に生かす

花祭窯

花祭窯外観
龍の文様が描かれた花器に黄色と紫の花がいけてある

床の間で鮮やかな菊の花を生けて客をもてなす「染付龍文花器」

花祭窯のおちょこ

古伊万里にありそうでなかった文様としう秋刀魚の絵。「染付秋刀魚文蕎麦猪口」

    花祭窯の藤吉憲典さんは、江戸時代に作られた「古伊万里」の作風を踏襲し、現代生活の中でも使える形に進化させた器をつくる磁器作家だ。古伊万里とは有田焼や伊万里焼などに代表される「肥前磁器」の源流で、特に江戸時代初期の古伊万里は、少し灰色がかった素地に、絵柄も滲んでボケたような曖昧さに味わいを感じて人気が高い。

   「私は、古いものを再現して、現代生活の中にそれを提案したいんです。でも古いものを古いままではなく、基本は『オリジナルを超えるものを作る』です。例えば秋刀魚の蕎麦猪口(そばちょこ)の絵は古伊万里にはなかった絵ですが、あたかも200年前にも存在したかのようにデザインしています。もちろん古典的な絵柄をそのまま使いたい場合もありますが、それでもサイズ感を変えたりハンドルをつけたり、古いものとまったく同じになることはない。でも洋食器が主流だからといって絵柄も形もいきなり洋に変えてしまっては、今まで培ってきた文化がそこでブツンと途絶えてしまいます。私はその作品が、どこにルーツがあるのか、どこから受け継がれたものなのかというのが、わかるような変化の仕方をしなければと思うのです。

   だから私は敢えて古い技法にこだわって、土、絵具、焼き方、形のつくり方など数百年前の技法をそのまま踏襲しています。ろくろは電気ですけどね(笑)。ここへ来て実は窯も電気に変えたんですが、最初は思うようにならなくて・・・窯によって個性があります。自動制御であっても人の経験からくる微調整が必要です」

   400年来、窯の中の炎を見続けてきた先人が感覚的に覚えてきたのは火加減。その感覚の大切さこそ、未来につないでいきたい文化なのではないだろうか。

土型でつながる過去と未来 いつか再び人々を癒す日が来る

筑前津屋崎人形巧房

型小屋で語る原田さん
津屋崎人形居眠り童太鼓

「寝る子は育つ」と子どもの健康な成長を祈願した「眠りもの」と呼ばれる寝ている姿の子どもの人形『居眠り童太鼓』

津屋崎人形餅食い童人形

縁起の良いもの(鯛や海老、お面など)を持っている子どもの人形が、数多く伝わっており、これもその一種『餅食い童人形』

   餅をのばしてすする童や太鼓の上で居眠りする童など、ちょっと気の抜けた仕草がとてもゆるくて癒されると、全国から注文が入る津屋崎の郷土民芸品だ。

   「筑前津屋崎人形巧房」は、江戸時代に創業。1777年には生活土器(雑器)を作り始め、次第に人形を作るようになったという。現在は原田誠さんで7代目を数える歴史ある土人形工房だ。「型小屋に行けば、代々作ってきた土型が千個以上保存してあります。今人気の『モマ笛』や『ごん太』も、江戸時代や明治時代の古い土型を探し出してきて復刻したものなんです」。これらの土型は息子さんの翔平さんに受け継がれ、さらに未来へつながり、再び新たな人形となって日の目を見ることになる。その日が来るまで、みんなここで待っているのかと思うだけで、とても愛おしく感じる。

革だから表現できる生き物のリアルな造形

cokeco

コケコ内観
革細工のカブトガニ

津屋崎の干潟に生息するカブトガニをほぼ実寸大で再現した革のカブトガニ

革細工のパンのブローチ

バゲットやカンパーニュなど、質感がパンそのもの!『パンのブローチ』

   葉脈の一本一本を再現した葉っぱのピアス、パンの肌触りそのもののブローチ、壁に掛かったカブトガニのオブジェは本物にしか見えないが、近づいてみると縫い目がある。一見してそのアクセサリー類が革だとわからないのは、あまりにもリアルだからだろう。

   2012年に東京から移住してきた田中立樹さん・知絵さん。手帳や文具は知絵さん、その他のものは立樹さんが担当する。「元々、革靴をつくっていて、立体造形のほうが僕自身好きなので、そうした技術を生かして、動物や自然のものを形にしたものが多いですね」と、革は自由度も高く、表現の幅があり、使いこめば味が出るので面白いという。

   ここを覗けば革製品のイメージがきっと変わるにちがいない。

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