上陸・産卵・ふ化、そして海へ…

更新日:2020年02月20日

 甲長わずか5センチから、10年ほどで立派に成長し、産卵を始めるであろうと考えられているウミガメ。
 砂浜に上陸したウミガメは涙を流して産卵し、再び海へと帰っていきます。上陸から産卵まではどのような過程なのでしょうか。
 また、産み落とされた卵は砂の中でどのようにして成長し、ふ化し、海へと向かうのでしょうか。

上陸と産卵

 日本近海では5種のウミガメが見られます。このうち日本で産卵を行うのはアカウミガメ・アオウミガメ・タイマイの3種です。
 このうち、本町にも産卵に訪れるアカウミガメは、主に本州中部から沖縄県の八重山地方までの広い範囲で産卵を行います。産卵時期は地方で異なっていますが、4月から8月にかけてみられます。
 アオウミガメは鹿児島県の屋久島より南の地方で5月から8月にかけて産卵を行います。東京都の小笠原諸島が産卵場として有名です。
 タイマイは沖縄本島より南の地方で少数が産卵を行っています。3月から10月までの高温期に行われるようです。
 ウミガメは産卵のとき砂浜に現れます。そのとき、主に以下のような順序をたどります。

3種のウミガメの産卵域の地図
  1. 海中を泳ぎ砂浜に接近する。
  2. 海から砂浜に上がる。
  3. 砂浜を歩きまわる。
  4. カメの体が入るくらいの穴(ボディーピット)を掘る。
  5. 卵を産み落とす穴(卵室)を掘る。
  6. 卵を産む。
  7. 卵室を砂で埋める。
  8. ボディーピットを埋める。
  9. 波打ち際に向かう。
  10. 海に入り海中に消える。

 このようにして親ガメは砂浜に上陸・産卵しますが、必ずしも産卵するとは限りません。ただ歩き回って海に帰ってしまう場合もあります。
 ウミガメの産卵は1シーズンに1度だけ行われるのではなく、数回行われることが解明されています。
 鹿児島県屋久島のいなか浜で行われた調査では、同じ親ガメが1シーズンに1~5回産卵することが分かりました。親ガメの産卵間隔は、ほとんどが11~25日の範囲で再上陸することも分かり、平均値は18日でした。宮崎県の産卵場での研究では14~25日、徳島県の産卵場では15±(プラスマイナス)4日と報告されています。

[右図:3種のウミガメの産卵域]

卵とその成長

 ウミガメの卵は、産みつけられたとき、すでに最初の発育が始まっています(胚の発生)。砂の中で卵が順調に育つためには、適切な環境が必要です。発育が可能な温度は約24~33度の範囲で、温度が高いほどふ化までの日数は短くなる傾向にあるようです。
 また、ウミガメの性も温度によって左右されます。温度が約29度より低いとオスが、高いとメスが多く生まれます。日光があたる産卵巣では温度が上がってメスが増え、日陰の産卵巣ではオスが増えた例があります。
 砂中の水分もふ化にとって大事です。ウミガメの卵は成長するにしたがって周囲の水分を吸収します。もし砂が乾燥していたり、卵より濃度の濃い海水が含まれている砂であったりしたならば、卵は水分を失い死ぬ可能性があります。
 水分が極端に多い場合も問題があります。卵は殻ごしに呼吸をしており、多くの水分が砂に混じってしまうと呼吸ができなくなり、死に至ります。
 ウミガメの卵の成長にはさまざまな環境要因が関係しているのです。

ふ化と脱出

 ウミガメはえさの食い分けによって競争関係を回避しています。
 アカウミガメは貝(軟体動物)やヤドカリ(節足動物)などの底生動物、アオウミガメは海草や海藻、タイマイはサンゴ礁に生息するカイメン、オサガメはクラゲ類、ヒメウミガメは小さい底生動物を食べるようです。
 日本の沿岸はアカウミガメ、アオウミガメ、そして南西諸島はタイマイのえさ場となっています。

成長と寿命

勝浦海岸で生まれた子ガメの写真

 産卵から約2か月後、卵の中で十分に発育した子ガメは、まず自分の入っていた卵の殻を破り砂の中に脱出します。砂の中の子ガメたちは数日のうちに活発に動き始め、今度は砂からの脱出に挑戦します。卵はほぼ同時期にふ化するため、何十匹もの子ガメが砂の中でもがくことになります。そうしているうちに地下数十センチの砂の天井が徐々に崩れ始め、地上へと登っていくことができます。ふ化から地上へ脱出するまでには数日から1週間ほどかかり、中には卵や砂から脱出できずに死んでしまうものもあります。
 砂の中の子ガメたちは、夜になるのを待って地表へと這い出てきます。1匹が出てくると次から次へと頭を出し、海へと向かっていきます。子ガメには明るい方向へ向かう習性があり、迷うことなく海へとたどり着くことができます。
 しかし、海よりも明るい街灯などの光があると、子ガメはそちらに向かってしまい、道に迷うことになります。その間に体の乾燥や体力の消耗が進み、弱ってしまうこともあります。
 また、海までの道のりの間にカニなどに捕食されたり、海岸に落ちているごみなどに迷い込み、出られなくなったりすることもあります。
 このように、砂から出た子ガメがすべて海にたどり着ける、というわけではないのです。

[右写真:勝浦海岸で生まれた子ガメ]

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