2012年6月1日号

広報ふくつ6月1日号

「しまった！」そう思った瞬間。左手がぱっくりと割れ、血が噴き出していました。彫刻をしているときに鑿（のみ）を突き刺したのです。4針のけがでした。
傷は癒えましたが、指の動きが鈍くなり、17年間続けてきたクラッシックギターが弾けなくなりました。そのことは私に大きなショックを与えたとともに「手に入れたものは、突然に失ってしまうものだ」ということを教えてくれました。
私たちは変化の世界に生きています。身体は、老化するし、けがや病気で簡単に壊れてしまいます。心の調子だって波があって当然。社会・経済情勢は止まることなく盛衰を繰り返しながら、地球環境を悪化させています。
人生は変化の連続で、一瞬たりとも停止していません。私たちは生きる過程で、勉強したり、大切な人と出会ったり、子どもを育てたり、働いたり、病気になったり、大切な人を失ったり…さまざまな変化の中に生きています。
人間には、欲しいものや失いたくないものがたくさんあります。しかし、欲しいものを所有することや、所有したものを手放してはならないということを幸せの絶対条件にしてしまうと、人生はほとんど不幸に終わります。生きることは変化するということで、手に入れることと失うことの連続だからです。
私は今回のけがを通じて、「生きるのに必要なものが揃っているということを幸せの条件にしよう」と決めました。そう考えると人生が身軽になりました。
藤野