2013年12月15日号

 なかなか寝付けない夜があります。そんな夜は座禅を組むことにしています。暗闇の中で背筋を立てて座り、呼吸に意識を添わせていると、透明で満ち足りた孤独を味わうことができます。落ち着いたところでベッドに入ると眠りに就くことができるのです。
 座禅に集中すると意識が鋭くなります。その状態では日常生活で感じることのできない微細な心の動きを観察することができます。
 感情について小さな発見がありました。人間を含めた全ての動物は感情の支配下あるということです。感情の力は強力で、ひとたび欲や怒りに火が付くと、考えの方向が固定され、行動は強制されてしまいます。犬などの動物は、食べものを見れば、食べずにはいられなくなります。心に食欲という吸着エネルギーが発生しているのです。また知らない人間などに出会うと、吠えたり、襲ったりします。心が恐怖に染まり、反発エネルギーが生じているのです。
 人間を支配しているのも感情エネルギーと言っていいでしょう。家庭内のいさかいから国家間の戦争まで、全ての争いを引き起こしている根源には感情があります。感情は心身に対してリアルな感触を伴うため、私たちは外界の現象と心に生じる心象とを同一視してしまいます。本来、外界の現象と心に現れる心象は、全く別のものです。しかし、「まさに私の心が感じているのだから、これが現実だ」と思考が飛躍してしまうのです。心の働きと現実とがごちゃまぜになると、感情が心を圧迫し始めます。このことに気付いてからは心の動きに少しだけ敏感になりました。
藤野

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